AI活用の裏に潜む「権利リスク」
AI技術の進化に伴い、画像・音声・テキストなどの多様なデータを活用したモデル開発や学習が日常的に行われるようになりました。
しかし、これらの素材には著作権・肖像権・プライバシー権などの法的権利が密接に関わっており、開発企業が知らずに権利を侵害してしまうケースも少なくありません。
本記事では、AIを開発・運用する企業が安心して技術を展開するために、学習素材の選定やモデル設計において注意すべき権利とその実務対策を整理します。
AI開発・学習に関わる主な権利
AI開発企業にとって、学習素材の取り扱いは技術的な課題であると同時に、法的な責任を伴う領域です。
特に外部データを活用する場面では、複数の権利が複雑に絡み合い、開発の自由度とリスク管理のバランスが求められます。
以下に、AI開発の現場で特に注意すべき代表的な権利を紹介します。
1.著作権
創作性のある画像・文章・音声などには著作権が発生します。たとえインターネット上で公開されていても、無断でAIに学習させることは著作権侵害となる可能性があります。
2. 肖像権・パブリシティ権
人物の顔写真や動画を学習素材として使用する場合、本人の同意が必要です。特に有名人の画像にはパブリシティ権が関わり、商用利用には厳しい制限があります。
3. プライバシー権
顔・声・位置情報など、個人が特定できるデータは、プライバシー保護の観点から慎重な取り扱いが求められます。
4. 契約上の制限
APIや外部データベースを利用する際は、利用規約や契約書に「学習利用不可」「商用利用不可」などの制限がある場合があります。
よくあるNG例とそのリスク
AI開発企業が現場で陥りがちなNG例と、それに伴うリスクを以下に整理します。

- SNS投稿画像を無断で学習に使用 → 著作権侵害で削除要請や損害賠償の可能性
- 顔写真をAIに学習させたが、本人の同意なし → 肖像権侵害で訴訟リスク
- 商用利用前提で学習したが、素材が非商用限定 → 契約違反でサービス停止
- 公開データだからOKと思っていた → 実は「研究目的限定」のライセンスだった
AI開発企業が取るべき実務対策
AI開発における権利リスクは、単なる知識ではなく、実務レベルでの対応力が問われます。
特に、外部素材を活用する場合は、社内体制の整備と部門間の連携が不可欠です。
以下では、開発企業が現場で実践すべき主要な対策を整理しました。
法務・開発・企画の各部門が連携し、リスクを未然に防ぐための参考としてご活用ください。
信頼されるAI活用は「権利配慮」から
AIの可能性を最大限に活かすためには、技術力だけでなく、権利への配慮と実務対応力が不可欠です。
開発企業が安心してAIを活用するためにも、素材の選定・契約の確認・同意取得など、現場レベルでの権利管理を徹底しましょう。
そして、社内だけで判断が難しい場合は、AIと法務の両面に精通した専門的な会社に相談・依頼することも重要です。信頼できるパートナーと連携することで、リスクを未然に防ぎ、より安全で持続可能なAI活用が可能になります。


