画像提供に関わる人の多くが「モデルリリース(人物の肖像権に関する同意書)」には馴染みがあるかもしれません。しかし、建物や物の撮影・利用に関しても、同様に「プロパティリリース(所有物に関する同意書)」が必要になるケースが存在します。
とくに、画像を商用目的で販売・提供する場合には、撮影対象が誰の所有物であるか、どのような権利が関係しているかを事前に確認することが不可欠です。本記事では、プロパティリリースの基本から、必要となる具体例、施設ごとの撮影基準、提供者が注意すべきポイントまでを整理します。
プロパティリリースとは何か

プロパティリリースとは、建物や物の所有者が、その対象物を含む画像の商用利用を許可する書面です。人物に対する「モデルリリース」に対して、物件・物体に対する同意書が「プロパティリリース」です。
この制度は、以下のような権利を保護するために存在します、
- 著作権(建築物や美術品など、創作性のある対象)
- 商標権(企業ロゴやブランド商品)
- 意匠権(デザイン性の高い家具や製品)
- プライバシー権(個人宅や私有地)
撮影自体は可能でも、画像を販売・提供する際には、これらの権利を侵害しないよう配慮が必要です 。
なぜ必要なのか:権利侵害のリスク
画像に写っている建物や物が、著作物や商標、私有財産である場合、無断で商用利用すると法的なトラブルに発展する可能性があります。たとえば、
- 有名な建築物やデザイン建築は、著作権の対象となることがある
- ブランドロゴや商品パッケージは、商標権の保護対象
- 個人宅や私有地は、プライバシーの観点から利用制限がある
「撮影できたから使っていい」とは限らず、撮影許可と商用利用許可は別物です 。
公共施設・インフラ施設・有料施設における撮影基準
施設によっては、撮影そのものに制限が設けられている場合があります。とくに営利目的での撮影・利用には、事前の申請や許可が必要です。
公共施設
駅、空港、市庁舎などの公共施設では、営利目的の撮影に対して独自の申請ルールが設けられていることがあります。施設管理者の許可がない場合、撮影はできても画像の販売は認められないことがあります。
インフラ施設
鉄道、電力、水道などのインフラ関連施設は、安全保障や運営上の理由から、撮影自体が制限されていることがあります。とくに構内や設備の詳細が写っている場合は、公開・販売が禁止されるケースもあります。
有料施設
美術館、テーマパーク、庭園などの有料施設では、入場時点で「撮影は私的利用に限る」とされていることが多く、画像の販売はグレーゾーンです。施設の利用規約に「商用利用禁止」と明記されている場合、プロパティリリースがない限り販売はできません。
重要:許可を得ていない画像は、原則として販売・提供できません。施設ごとに撮影・利用基準が異なるため、事前の確認が不可欠です。
プロパティリリースが必要になる具体例
以下のような対象物を撮影・利用する場合は、プロパティリリースの取得が求められることがあります。
- 有名建築物(例:テーマパーク、デザイン性の高い建物)
- 店舗外観(看板やロゴを明確に意図して撮影している場合)
- 美術館・博物館の展示物
- ブランド商品(衣類、家電、車、ショウウィンドウなど)
- 個人宅や私有地(表札、住所、敷地が特定できる場合)
- ペット
- アニメや漫画のキャラクター
プロパティリリースが不要なケース
一方で、以下のようなケースでは、リリースが不要とされることもあります。
- 公共空間での撮影(ただし、商標や著作物が写っていないことが前提)
- 建物が著作物に該当しない一般的な住宅や構造物
- ロゴや商標が写っていない、または判別できない状態
- 編集によって識別性を除去した場合(ぼかし、トリミング等)
ただし、これらはあくまで一般論であり、利用先の規定や画像の用途によって判断が分かれることがあります。
ストックフォトとAI画像提供における扱いの違い
| 項目 | ストックフォト | AIデータセット提供 |
|---|---|---|
| 利用目的 | 公開・商用利用 | 学習素材(非公開利用が中心) |
| リスク | 公開範囲が広く、権利侵害のリスクが高い | 利用範囲が限定的だが、将来的な公開の可能性あり |
| リリースの必要性 | 高い(原則取得) | ケースバイケース(識別性・用途による) |
ストックフォトでは、画像が広告や出版物などに広く使われるため、リリースの取得が原則です。AI画像提供では、内部利用が中心ですが、識別性が高い対象や将来的な公開を想定する場合には、同様の配慮が必要です。
撮影者・提供者が注意すべきポイント
- 撮影対象が著作物・商標・私有地・施設規定に該当するかを事前に確認する
- 撮影許可と利用許可は別物であることを理解する
- 公共施設や有料施設では、営利目的の撮影は原則として事前申請が必要
- 不明な場合は、リリース取得または対象の除去・編集を検討する
- 提供先の利用範囲・公開範囲を把握しておくことも重要
プロパティリリースは“画像の信頼性”を守る仕組み

画像提供は、撮影者・提供者・利用者の三者が信頼のもとに成り立つ行為です。プロパティリリースは、その信頼を制度的に支える仕組みです。
とくに商用利用を前提とする画像提供においては、撮影対象の権利関係を事前に確認し、必要な手続きを踏むことが、提供者としての責任であり、画像の価値を守ることにもつながります。
「撮っていい」と「使っていい」は違う ——この原則を理解することが、画像提供者としての第一歩です。
ミツカルモールでは、プロパティリリースのテンプレートをご用意しております。
※必要事項が記載されていれば他の様式でも問題ありません。



