制作の仕事で悩みが尽きないもの。…それが「修正対応」。
気づけば予定よりも時間を取られ、精神的にも消耗してしまう“修正地獄”にハマった経験がある人も多いのではないでしょうか。
しかし実は、修正地獄の原因の多くは「技術力」や「対応力」ではなく、認識のすれ違いによって生まれています。最初に条件や線引きを共有していないことで、意図しない方向へズレが起こり、修正が増えていくのです。
どこですれ違った?“修正地獄”を招くコミュニケーションギャップ

「なんでこんなに修正が増えるんだろう…」
制作経験がある人なら、一度はぶつかったことのある壁ではないでしょうか。
実は、修正地獄の多くは“制作物そのもの”ではなく、スタート地点のすれ違いが原因で起きています。
つまり、作業が始まってからの問題ではなく、始まる前の認識合わせの不足が大きく影響するのです。
認識のズレは、打ち合わせの「ちょっとした差」から生まれる
例えばこんなケースがあります。
- クライアントの「シンプルに」と、クリエイターの「シンプル」の意味が違う
- クライアントが“当然伝わっている”と思っていた前提が、実は共有されていない
- 軽微と思っていた修正が、実際にはレイアウトや構成ごと見直すような大掛かりな修正だった
言葉そのものは同じでも、各自の頭の中にあるイメージが違うことで、最初の方向性がズレてしまうのです。
“おまかせで”の一言が、修正の引き金になることも
「おまかせします」「いい感じでお願いします」
一見自由度が高く、やりやすそうに見える言葉ですが、実はとても危険⚠️
おまかせ=制作者の裁量が広がるように思えますが、実際には
- クライアントの好み
- 本当は避けたい色・テイスト
- 社内の暗黙ルール
などが後から出てきて、「思ってたのと違う」→修正へという流れになりやすいのです。
なぜ気づけない?“言語化されない前提”がトラブルを生む
制作現場で最も厄介なのは、言語化されていない前提や期待値。
- 競合でよく見る表現は避けたい
- 社内で「こういうデザインはNG」と言われている
- 過去の制作で嫌だったポイント
- 実は、担当者が好きなテイストが明確にある
こうした情報は、クライアント側も「言わなくても伝わる」と思いがちですが、クリエイターには絶対に伝わりません。
そしてこのギャップが、修正回数を雪だるま式に増やす原因になります。
修正地獄は“作業の問題”ではなく“ズレの問題”
修正地獄は、制作者の腕前の問題でも、クライアントの要求が厳しいからでもありません。
その多くは、最初の認識合わせの不足によって生まれる“すれ違い”。
だからこそ、受注前にどこまで確認できるかが、修正地獄を回避できるかどうかを大きく左右します。
受注前に確認したい5つのポイント
修正地獄の多くは、作業を始める前の“すれ違い”から生まれます。
だからこそ、受注前にしっかり確認しておくことが、トラブル回避の最も効果的な方法です。
ここでは、受注前に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
1.目的・ゴールの明確化
「何のために作るのか?」
この問いがブレていると、制作物の方向性は確実に迷走します。
たとえば同じチラシでも、認知拡大が目的なのか?来店を促したいのか?ブランドイメージを作りたいのか?によって、色も構成も文章も変わってきます。
最初に最終ゴールと求められる成果を明確にしておくことで、後の修正が大きく減ります。
2.ターゲットと使用シーンの共有
制作物が使われる“文脈”を共有すると、方向性がはっきりします。
ターゲットが曖昧なまま始めると、
「もっと若い層向けに」「もう少し落ち着いた雰囲気で」など、後からの方向転換につながります。
誰に届く制作物なのかを、具体的に共有しましょう。
3.納期とスケジュールの現実的な擦り合わせ
制作物は「作る時間」だけでなく、確認する時間・調整する時間・フィードバック待ちの時間も必要になります。
ここが曖昧だと、急な修正で徹夜になったり、修正依頼が小出しで届いたり…などのトラブルに直結します。
「初稿はいつ」「フィードバックはいつ」「最終提出はいつ」を、双方のスケジュールでしっかり確認しておきましょう。
4.テイスト・品質の期待値合わせ
見た目に関する認識のズレは、修正地獄の最大要因です。
- 好きな(目指す)デザインの例とそのポイント
- 避けたいデザインや表現
- 色の方向性(コーポレートカラーや競合のカラーなど)
- 全体の雰囲気(シンプル/可愛い/高級感 etc.)
などを、具体的な画像や参考資料を使って共有することで、“言葉だけ”の抽象的な指示を減らせます。
「いい感じで」「柔らかく」「明るい感じで」
これらは要注意ワード。
必ずビジュアルとセットで確認しましょう。
5.クライアントとクリエイター、作業範囲の線引き
意外と見落とされがちなのが 作業範囲の境界線。
- 写真素材は誰が準備する?
- 原稿の文字数調整はどちらが担当?
- 画像のトリミングは?
- 校正は?
ここをあいまいにしてしまうと、作業の押し付け合いになってしまいます。
制作が進む前に、どこまでがクリエイター側の対応で、どこからがクライアントの役割かを明確にしておきましょう。
修正地獄の多くは「受注前」で決まる
修正ラリーが増える原因は、デザインの良し悪しそのものというよりも、その前段階にある認識のズレや、言葉にされないまま進んでしまったことが前提にあります。
目的やゴールがあいまいなまま走り出してしまったり、ターゲットや使用シーンのイメージが共有されていなかったり、納期やスケジュール、テイスト、作業範囲について「なんとなく」で了解してしまうことで、あとから大きな修正が積み上がっていくわけですね。
逆にいえば、受注前のタイミングでこうしたポイントをひとつずつ確認しておくだけでも、その後に発生する修正の量やストレスは大きく変わります。
後編では、こうしたトラブルを避けるための実践的な方法を解説します!




